#005
Tomoko Yabumae

藪前 知子

天使のとまり木

ARTIST
ARTIST

恩地 孝四郎

益永 梢子

上田 良

2023.10.7 Sat. — 2023.10.27 Fri.
#005
Tomoko Yabumae

藪前 知子

天使のとまり木

ARTIST
ARTIST

恩地 孝四郎

益永 梢子

上田 良

2023.10.7 Sat. — 2023.10.27 Fri.
#005
Tomoko Yabumae

藪前 知子

天使のとまり木

ARTIST
ARTIST

恩地 孝四郎

益永 梢子

上田 良

2023.10.7 Sat. — 2023.10.27 Fri.
13

恩地 孝四郎 無題

Photo: Tadayuki Minamoto

益永 梢子 A-1,A-2,A-3

上田 良 METAL GLUE(メビウス、球、四角、ミラー)

Outline
会期

2023.10.07 Sat. — 2023.10.21 Sat.

日祝休廊

開廊時間

10:00 — 18:00

お問い合わせ

思文閣銀座

TEL: 03-3289-0001

MAIL: tokyo@shibunkaku.co.jp

Curator's Statement

藪前 知子

創作版画、あるいは日本における抽象絵画の先駆者として知られる恩地孝四郎(おんち・こうしろう)は、道や空き地で拾った木々やガラクタを木箱に入れて保管し、時々「ひまのおつきあい」と称してそれらで遊んでいたと伝えられます。戦後間もなく、彼は、それらを即興的に組み合わせて紙に刻印し始めます。版を彫らない版画、のちにマルチブロックと呼ばれる手法です。同じ頃、彼は版画とはまた異なる「ひまのおつきあい」を残しています。木々や石、三角や丸、バラバラの要素が組み合わされたこの作品は、私たちのよく知っているあるイメージを形作っているように見えます。本展は、この、戦争の瓦礫から作られた「天使のような」作品、1949年頃に制作された恩地孝四郎《無題》を起点に、イメージの成立過程について響きあう問題を扱ってきた益永梢子(ますなが・しょうこ)、上田良(うえだ・やや)の二人を招いて構成されます。膨大なイメージの氾濫にさらされる現代、彼らの作品は私たちに、能動的に「見る」という行為を取り戻す、ひとつの手がかりを与えてくれるはずです。

 

さて、恩地は、版を重ねて制作する木版画とは、絵画の中で一番「構成的な過程を持つ」と考えていました。異なる想念や情景を、一つの画面に総合して表現したい時、分割して塗り分けたりせずとも、それらを別々の版に刷って合わせればよいからです。

版画を学んだ上田良もまた、バラバラの世界を一つに統合する可能性を、さまざまなメディアを用いて探求してきました。その主要な道具は、「メタル・グルー(金属の接着剤)」と彼女が呼ぶカメラです。脆い立体を組み立てて生まれる一瞬が写真によって切り取られますが、上田はその構成要素の関係を、単なる物理的な条件ばかりではなく、写真によって強調されるその物質的な特性の繋がりによって、つまりイメージの中にしか存在しないものとして捉えようとします。

益永梢子の絵画もまた、一時停止の状態で現れたような、可塑的で動的な印象を与えます。作家は、見るものの心理や環境によって微妙に変化する色彩や、性質や成り立ちの異なる線を組み合わせ、時に絵画の支持体とモチーフ、裏と表を逆転させたりしながら、その行きつ戻りつの過程も痕跡として残しつつ制作してきました。その作品が想像させる作者の選択や手の動き、素材から受け取る感覚の応答は、見るという経験の複雑さと豊かさを私たちに伝えます。

 

戦後の混乱期の脆いガラクタとの手遊びに、天使の顕現を託した恩地孝四郎。目に見えない世界からの伝令であるその存在は、バラバラになってしまった世界を繋ぎ合わせてくれるために現れたのかもしれません。単なる物質の集合が、いかにして芸術作品と呼ばれ私たちを共有へと導くのか。本展は、この根本的な主題に触れる多くの示唆を含むものとなるはずです。

 

Curator

藪前 知子

東京都現代美術館学芸員。これまで担当した主な展覧会に「大竹伸朗 全景 1955-2006」(2006)、「山口小夜子 未来を着る人」(2015)、「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」(2015)、「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」(2020)、「クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する](2021)(以上、東京都現代美術館)。外部企画のキュレーションに、札幌国際芸術祭2017など。キュレーションの他に、雑誌等に日本の近現代美術についての寄稿多数。

Photo by Takehiro Goto

Artists

恩地 孝四郎

版画家。東京生。白馬会洋画研究所に学ぶ。田中恭吉・藤森静雄とともに詩と版画の同人誌『月映』を創刊。大正8年には山本鼎らと日本創作版画協会を、昭和6年には日本版画協会を創立。のち国画会会員となる。また、萩原朔太郎の詩集『月に吠える』や『北原白秋全集』の装幀を手掛けるなど、創作版画の発展に重要な役割を果たす。昭和13年版画研究会「一木会」を開設。戦後は川口軌外・長谷川三郎らと日本アブストラクト・アート・クラブを結成。日本における抽象版画の先駆者、また創作版画界の指導者として高く評価される。昭和30年(1955)歿、63才。

Photo: Tadayuki Minamoto

益永 梢子

美術作家。絵画を起点とし、作品が置かれる空間、つくられる周囲(生活)の環境や、作品の内部におけるあらゆる要素と、外部と地続きになっている様々な関係性を観察・発見することで進める制作は多様な手法を用いて展開される。

1980年大阪生まれ。2001年成安造形短期大学造形芸術科洋画クラス卒業。2018-2019年、文化庁新進芸術家海外研修制度によりニューヨークに滞在。ブルックリンにあるNARS Foundation主催のインターナショナルレジデンスプログラムに参加。現在は埼玉県を拠点として活動。

photo: Masumi Kawamura

上田 良

自作の造形物を撮影した写真作品をはじめ、版画やドローイング、コラージュなどの制作を行い、様々な場所に存在していたものたちが関係し合う瞬間に立ち会いたいと思い、制作をしている。またアーティストユニット「THE COPY TRAVELERS」の一員として「複製」という手法の可能性について実験を試みている。

写真:迫鉄平

19 WORKS
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