#010
Yuta Nakamura

中村 裕太

月ニトハルル

ARTIST
ARTIST

中村 裕太 松元 悠 大田垣 蓮月 石黒 宗麿 河井 寬次郎 濱田 庄司 バーナード・リーチ 八木 一夫

2024.11.29 Fri. — 2024.12.13 Fri.
#010
Yuta Nakamura

中村 裕太

月ニトハルル

ARTIST
ARTIST

中村 裕太 松元 悠 大田垣 蓮月 石黒 宗麿 河井 寬次郎 濱田 庄司 バーナード・リーチ 八木 一夫

2024.11.29 Fri. — 2024.12.13 Fri.
Introduction

10回目を迎える今回のGinza Curator’s Roomは、美術家で京都精華大学准教授の中村裕太氏をお迎えします。本展「月ニトハルル」は、大田垣蓮月の興味深い逸話から着想を得ました。中村氏は、近代の工芸文化における模倣に注目しつつ、版画家で法廷画も手掛ける松元悠と、自身の作品を通して、現代における模倣のありようを考えます。

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中村 裕太 イニシエヲ 月ニトハルル ココチシテ フシメガチニモナル コヨイカナ

陶、2024

写真|麥生田兵吾

松元 悠 血石と蜘蛛(高畑山/コレヒドール島)

リトグラフ、かきた紙、2019

大田垣 蓮月 水指

Outline
会期

2024.11.29 Fri. — 2024.12.13 Fri.

日曜休廊

開廊時間

10:00 — 18:00

お問い合わせ

思文閣銀座

TEL: 03-3289-0001

MAIL: tokyo@shibunkaku.co.jp

協賛

野村證券株式会社

Curator's Statement

中村 裕太

いにしへを 月にとはるる 心地して ふしめがちにも なる今宵かな

大田垣蓮月

 

幕末から明治の歌人・大田垣蓮月(1791-1875)は、生活の糧として手づくねした器に自らの歌を釘で彫り込んだ陶器を拵えていた。京都の土産物として好事家からも好まれていたため、当時から贋作も多く出回っていた。

ある日、その模倣を試みていた商人が蓮月宅を訪ね、「どうしても文字がうまく書けません」と打ち明けると、「お安いこと」と商人が持参した器に自らの歌を彫り、おまけに手本として自らの陶器を手渡したという。

柳宗悦が「模倣について」のなかで取り上げたこの逸話は、あながち作り話ともいえない*¹。近年の発掘調査で、蓮月が聖護院村に居を構えたと推定される場所から蓮月焼が掘り起こされているが、そのなかに玉木良斉なる人物による蓮月焼を模倣した陶器も紛れている*²。蓮月の手解きを受け、自らの歌を彫り込んだとされる良斉の陶器は、贋作とは一線を画すが、同様に蓮月焼にみられる素朴な趣きが乏しい。

では、どうしたら蓮月の陶器作りを正しく模倣することができるのだろうか。柳は、蓮月の逸話の前段で、「真似したものは元のものより大概悪い。それは結果で受け取って、原因で受け取ってくれる人が少ないからだ」という濱田庄司の言葉を引用している。

その言葉は、松元悠の仕事を見ていても感じる。法廷画家でもある松元は、事件の結果としての判決ではなく、その犯行に至った原因に関心を向けている。そして、一人の観察者としてその事件現場を訪ね、そこで見聞きした断片的な体験をリトグラフ(石版画)に刷り出していく。他方で、近代の工芸文化に関心を向ける中村裕太は、結果として残された物品や文献資料を寄せ集め、もう目には見えない原因を想像しながら土をこねる。そして、それらの小さなオブジェを手遊ぶことで、その当時の光景を浮かび上がらせていく。

蓮月から模倣について問われた心持ちがする二人は、いくつかの出来事(発掘された玉木良斉の模倣陶器、民藝同人による模倣についての座談会、八木一夫による二番師と石黒宗麿論、版画の贋作事件)を紐づけて検証していくことで、伏し目がちにならない今日の正しい模倣を会場でお見せしていく。

 

                                    

註1:柳宗悦「模倣について」『宗教随想』1960年

註2:千葉豊「蓮月焼を模倣した陶器について」『京都大学構内遺跡調査研究年報』2018年

Curator / Artist

中村 裕太

美術家。1983年東京生まれ、京都在住。2011年京都精華大学博士後期課程修了。博士(芸術)。京都精華大学芸術学部准教授。〈民俗と建築にまつわる工芸〉という視点から陶磁器、タイルなどの学術研究と作品制作を行なう。文献調査やフィールドワークによる観察をもとに仮説を積み上げ、自らの手で実験した造形物を通して、近代以降の周縁的な工芸文化を考察していく。近年の展示に「チョウの軌跡|長谷川三郎のイリュージョン」(京都国立近代美術館、2023年)、「耽奇展覧」(ギャラリー小柳、2023年)、「第17回イスタンブール・ビエンナーレ」(バリン・ハン、2022年)、「眼で聴き、耳で視る|中村裕太が手さぐる河井寬次郎」(京都国立近代美術館、2022年)、「万物資生|中村裕太は、資生堂と  を調合する」(資生堂ギャラリー、2022年)、「MAMリサーチ007:走泥社─現代陶芸のはじまりに」(森美術館、2019年)、「あいちトリエンナーレ」(愛知県美術館、2016年)、「第20回シドニー・ビエンナーレ」(キャリッジワークス、2016年)など。著書に『アウト・オブ・民藝』(共著、誠光社、2019年)。

https://nakamurayuta.jp/

写真|麥生田兵吾

Artist

松元 悠

版画家、美術家。1993年京都府生まれ。2018年に京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻版画を修了。

2021年から関西をベースに法廷画を担当する。マス・メディアが報じる出来事(事件)の周縁に赴き、そこで得た情報からリトグラフ技法を用いた版画を制作している。

近年の展覧会に、個展「サラバ化物(憶測の追跡)」茨木市立ギャラリー/2024、「VOCA展」上野の森美術館/2024、企画展「出来事との距離ー描かれたニュース・戦争・日常」町田市立国際版画美術館/2023、個展「越後妻有MonET 連続企画展Vol.2松元悠 『版画報、道が動く』」越後妻有里山現代美術館 MonETなど。ほか、展覧会企画に「漁師と芸術家~琵琶湖を問う、琵琶湖を読む~」大津市立和邇図書館/2022がある。

写真|三輪泰生

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