#006
Daisuke Miyatsu

宮津 大輔

室礼の美

ARTIST
ARTIST

Ayako Someya 上田 桑鳩 エレン・アルトフェスト オーギュスト・ロダン 岡部 蒼風 黒田 泰蔵  新里 明士 林 千歩 藤井 達吉 毛 冠帥 見附 正康 宮永 理吉 森田 子龍 八木 一夫 劉 致宏 他

 

〈協力〉 Ota Fine Arts Galerie Supermarkt 東京画廊+BTAP nca | nichido contemporary art White Cube Yutaka Kikutake Gallery

 

2023.11.30 Thu. — 2023.12.13 Wed.
#006
Daisuke Miyatsu

宮津 大輔

室礼の美

ARTIST
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Ayako Someya 上田 桑鳩 エレン・アルトフェスト オーギュスト・ロダン 岡部 蒼風 黒田 泰蔵  新里 明士 林 千歩 藤井 達吉 毛 冠帥 見附 正康 宮永 理吉 森田 子龍 八木 一夫 劉 致宏 他

 

〈協力〉 Ota Fine Arts Galerie Supermarkt 東京画廊+BTAP nca | nichido contemporary art White Cube Yutaka Kikutake Gallery

 

2023.11.30 Thu. — 2023.12.13 Wed.
#006
Daisuke Miyatsu

宮津 大輔

室礼の美

ARTIST
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Ayako Someya 上田 桑鳩 エレン・アルトフェスト オーギュスト・ロダン 岡部 蒼風 黒田 泰蔵  新里 明士 林 千歩 藤井 達吉 毛 冠帥 見附 正康 宮永 理吉 森田 子龍 八木 一夫 劉 致宏 他

 

〈協力〉 Ota Fine Arts Galerie Supermarkt 東京画廊+BTAP nca | nichido contemporary art White Cube Yutaka Kikutake Gallery

 

2023.11.30 Thu. — 2023.12.13 Wed.

岡部蒼風 作品47-8(初原)

Outline
会期

2023.11.30 Thu. — 2023.12.13 Wed.

日曜休廊

開廊時間

10:00 — 18:00

お問い合わせ

思文閣銀座

TEL: 03-3289-0001

MAIL: tokyo@shibunkaku.co.jp

Curator's Statement

宮津 大輔

私達は古より、季節の行事を大切にしてきました。様々な年中行事に合わせて室内を整えることを「室礼」といい、その起源は平安時代にまで遡ります。当時の建築様式である寝殿造は、各部屋に柱だけしかない大変開放的な造りでした。そこで、屏風や御簾、几帳、あるいは押障子や鳥居障子といった建具で仕切り、家具や調度品を配することにより日常生活や儀式の場としていました。

やがて室町時代に入ると、「床の間」を備えた和室の原型ともいうべき書院造が誕生します。「床の間」は、身分の高い貴人や主君が坐する上段の間に端を発するという説もあることから、神聖な場所とされてきました。一方で二十四節気に基づく季節の移り変わりに合わせ、主人が客をもてなすために様々な工夫を凝らす場でもありました。

「神楽」のはじまりが招魂・鎮魂に伴う神遊びであったことからも明らかなように、神の御代から日本人は「遊び」を神と人が交わる場と捉えてきました。これらのことに鑑みれば、室礼をホモ・ルーデンス(遊ぶ人)※1によるキュレーションと考えることも、あながち牽強付会とはいいきれないでしょう。

明治維新を契機に西洋からの技術導入が急速な近代化を推し進める中で、伝統的な大和絵は日本画として生まれ変わりました。第二次世界大戦という未曾有の惨事がもたらした価値観の転換は、墨人会に代表される前衛書の誕生を促し、 “熱き抽象の時代”は用から脱した走泥社のオブジェ焼を現出させるに至ります。

工芸に代表される伝統技法を用いた作品と(純粋)芸術あるいは美術作品といった領域が、その言語的出自を含め揺らいでいる現在、革新的なコンセプト並びに表現で斯界に新風を吹き込むアーティスト達の活動も見逃すことができません。九谷焼赤絵細描の見附正康による、メイン・モチーフの仙境世界を排し、従であった瓔珞文や麻の葉文を散らした現代版インペリアル・イースター・エッグ。『弘賢随筆』(江戸時代後期)に登場する虚舟≒現代のUFO、あるいはガガーリン(Yurii Alekseyevich Gagarin, 1934~1968年)が見た地球を想起させる新里明士の蛍手。そして、人類共通の化学記号を書きながらも、琳派のたらしこみを思わせる美麗なにじみが読み取りを拒むAyako Someyaの書。これらに加えて東アジアからは、希代の目利きであった文豪・川端康成遺愛のロダン作《女の手》に倣って、毛冠帥による掌に加え、台湾の眩しい陽光や湿潤な空気までをも閉じ込めたような劉致宏が描く二十一世紀の芭蕉図を紹介します。

彼らの作品と近代日本画、前衛書、そしてオブジェ焼の共鳴は、室礼がプレイグラウンドであるばかりか、時空を超えたある種のタイムマシーンでもあることを雄弁に物語っているといえるでしょう。

 

※1:人間とは、「ホモ・ルーデンス=遊ぶ人」です。遊びは諸文化に先行して存在しており、人類が育んだあらゆる文化は、全て遊びの中から生まれたといっても過言ではありません。

参考:ヨハン・ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』高橋英夫訳、中央公論新社、1973年

宮津 大輔

アート・コレクター、横浜美術大学 教授、森美術館 理事

1963年東京都出身。東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科アートプロデュース専攻博士課程修了 博士(学術)。広告代理店、上場企業の広報・人事管理職を経て大学教授に転身。横浜美術大学第三代学長として改革を推進し、コロナ禍におけるV字回復を達成。また、既存の芸術祭とは異なる「紀南アートウィーク2021」や「“Fukuoka Art Next” Week 2022」の芸術監督として、斯界に新風を吹き込む。他方、世界的な現代アートのコレクターとしても知られ、台北當代藝術館(台湾・台北)での大規模なコレクション展「Invisibleness is Visibleness」(2011年)や、福岡アジア美術館とのユニークなコラボレーション展「エモーショナル・アジア」(2022年)などが大きな話題となった。

文化庁「現代美術の海外発信に関する検討会議」委員や「Asian Art Award 2017」「亞洲新星獎 2019」の審査員等を歴任。『新型コロナはアートをどう変えるか』『アート×テクノロジーの時代』(以上、光文社新書)『現代アート経済学Ⅱ-脱石油・AI・仮想通貨時代のアート』(ウェイツ)や『定年後の稼ぎ力』(日経BP)など著書や寄稿、講演多数。

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Photo: Tadayuki Minamoto

Photo: Tadayuki Minamoto

Photo: Tadayuki Minamoto

Photo: Tadayuki Minamoto

Photo: Tadayuki Minamoto

Photo: Tadayuki Minamoto

Ayako Someya

上田 桑鳩

書家。兵庫県生。名は順、容熙、別号に錦谷等。井原雲涯・比田井天来に師事する。書道芸術社を主宰し、雑誌「書道芸術」を刊行、また奎星会を結成して戦後は前衛書道運動に尽力した。奎星会代表。日展・毎日展審査員。昭和43年(1968)歿、69才。

エレン・アルトフェスト

画家。1970年ニューヨーク生。1997年イェール大学大学院絵画専攻修了。2002年スコウヒーガン絵画彫刻学校に在籍、2004~2005年にはマリー・ウォルシュ・シャープ美術財団のスタジオプログラムに選出される。イェール大学卒業後は人物画や具象画に取り組む。作家で画家のデイヴィッド・ハンフリーは、「彼女の絵画は、被写体がその周囲に包み込まれることで、識別するという単純な行為によって増殖・変形してゆくことに着目するものである。」と評している。彼女の描く対象は身近な植物や野菜、そして男性像など写実的なものであり、それらに対する深い観察と分析により被写体との関係及び感情を含む、現実を超えた彼女自身の視界を描いている。

Photo: Tadayuki Minamoto

オーギュスト・ロダン

フランスの彫刻家。パリ生。14才で帝国素描・算数専門学校入学し、最初は絵画を学び、後に彫刻に興味を持つ。彫刻家になる夢を追い国立美術学校を三度受験するも、挫折し進学を諦めた。後、カリエ゠ベルーズに師事し、彼の工房で小さな胸像から美術館や歌劇場の装飾まで様々な制作に携わった。ベルーズの工房がベルギーに移った後、六年間はベルギーで活動し、彫刻家として初めて展覧会に出展。1875年、イタリア旅行中にミケランジェロの作品に感銘を受けた。《地獄の門》や《考える人》などの作品を制作し、近代彫刻の父と称される。1917年歿、77才。

Main droite du personnage féminin du Baiser

岡部 蒼風

書家。群馬県生。名は幸十郎。比田井天来に師事。池田水城らと草人社を結成。草人社脱退後、グループ「蒼狼」(後に蒼狼社と改称)を創設し後進の育成にも尽力した。国際展への出品・招聘多数。平成13年(2001)歿、91才。

作品47-8(初原)

黒田 泰蔵

陶芸家。滋賀県生。カナダの陶芸家ゲータン・ボーダンに師事。島岡達三からも陶芸を学ぶ。カナダの製陶会社SIALにデザイナーとして勤務した後、ケベック州セイント・ガブリエルに築窯。昭和56年(1981)伊豆松崎町に、平成3年(1991)伊豆伊東市に築窯。白磁にこだわって作陶している。各地で個展多数。令和3年(2021)歿、75才。

白磁花生

榊原 紫峰

日本画家。京都生。名は安造。京都絵専卒。旧文展で注目を浴びたが、大正7年(1918)土田麦僊・村上華岳らと共に国画創作協会を結成する。同会解散後は展覧会出品をやめ、画壇とは離れて独り静かに制作を続けた。また京都絵専・京美大教授として教育に携わり、日本画壇に貢献した。日本芸術院恩賜賞受賞。昭和46年(1971)歿、83才。

玉蜀黍図

鈴木 治

陶芸家。京都生。昭和33年(1958)に八木一夫・山田光らと前衛陶芸集団走泥社を創立、先駆的な活躍で現代陶芸に新風をまきおこす。日本陶磁協会賞・朝日陶芸展ほか海外でも入選・入賞歴が多い。京都市芸大教授。平成13年(2001)歿、74才。

消えた雲

新里 明士

新里明士は1977年千葉県生まれ。現在は岐阜県土岐市を拠点に活動。透過性の高い白磁に穴を開け、透明の釉薬を埋めて焼成した代表作「光器」をはじめとする独創性の高い陶磁を手掛ける。近年では本作の焼成の過程で生まれる、傷やひび割れを起点とする新たな造形の可能性を探求し、破綻の中に生じる美しさに焦点を当てた作品を発表。光を帯びたような繊細な姿が特徴的な新里の作品は、アメリカ、イタリア、ルーマニアなど海外の多くの展覧会にも出展され、高い評価を得ている。近年の主な個展に「translucent transformation」(Yutaka Kikutake Gallery、東京、2022年)、「均衡と欠片」(Yutaka Kikutake Gallery、2021年)ほか、主なグループ展に「未来へつなぐ陶芸−伝統工芸のチカラ展」(パナソニック汐留美術館、東京、2022年)、「近代工芸と茶の湯のうつわ−四季のしつらい−」(国立工芸館、石川、2021年)、「No Man’s Land−陶芸の未来、未だ見ぬ地平の先−」(兵庫陶芸美術館、2021年)、「DOMANI・明日展 2021」(国立新美術館、東京、2021年)など。主な受賞歴に、2005年イタリアファエンツァ国際陶芸展新人賞、2008年パラミタ陶芸大賞展大賞、国際陶磁器展美濃審査員特別賞、2009年菊池ビエンナーレ奨励賞、2014年MOA岡田茂吉賞新人賞、2021年2020年度日本陶磁協会賞。

主な所蔵先に、Minneapolis Institute of Art(アメリカ)、茨城県陶芸美術館、Palamita Museum(三重)、MOA美術館(静岡)、Faenza Ceramic Museum(イタリア)Anadole University Museum(エスキシェヒル、トルコ)。

林 千歩

1988年東京都⽣まれ。2018年東京藝術⼤学⼤学院美術研究科博⼠後期課程美術専攻修了、博⼠号取得。⾃らを被写体に主に映像作品を⼿掛け、現代的な事象に⾃⾝の空想を重ね独⾃の世界観を⽴ち上げる。主な展覧会に「Try the Video-Dr awing」(共同企画, TAV GALLERY, 2021)、「PUBLIC DEVICE -彫刻の象徴性と恒久性-」(東京藝術⼤学⼤学美術館陳列館, 2020) 、「Festival Seni Media Internasional 2019」(インドネシア国⽴美術館, ジャカルタ・インドネシア)、「六本⽊クロッシング2019展:つないでみる」(森美術館) 、「Transitional」(Organized as part of the 森美術館, “Asia Now” Exhibi tion, パリ・フランス, 2018)、「アジアン・アート・ビエンナーレ・バングラデシュ2016」(バングラデシュ・シルパカラ・アカデミー, ダッカ・バングラデシュ)、「瀬⼾内国際芸術祭2013」(⼩⾖島・⾹川)など。

©Chiho Hayashi

藤井 達吉

工芸全般の異色作家。愛知県生。七宝・陶磁器・漆器・和紙・染織などの工芸制作のほか、画や書にも優れたものを残す。また、作家活動と共に、工芸革新運動等の啓蒙家として大きな役割を果たした。文展審査員。昭和39年(1964)歿、83才。

しゅろ草

毛 冠帥

毛冠帥は1993年中国寧波に生まれ、現在は上海在住。2013年に彫刻を始め、当初は木の端材から人間や動物のフィギュアを制作していた。その後の長い練習と考察の中で、彫刻という創作形態が擬人化されたイメージを生み出すことを発見した後、彼は作品の表現形式を拡大し続け、さまざまな性格の基調のための素材の可能性を研究した。現在の主な素材は木、大理石、金属である。彫刻を他の創造的なメディアと区別する可能性と、触覚と彫刻の特別な結びつきを研究している。彼の思考論理は実存主義の哲学に基づいており、人々の客観的な知覚の中で現実世界を考察している。目に見える現実から距離を置き、誇張された線で現実を問いかける。彼の作品の言語は原始的であると同時に現代的でもある。

 

近年の主な展覧会に個展「Shadow of the Moon」Matthew Liu Fine Arts(上海)、「In Sight」Gene Gallery(上海)、グループ展「Towards a New Land:Tales of the Ancient Pavillion」蘇州庭園芸術祭現代美術展、「第5回寧波現代美術展」寧波美術館、「Pride of China」Powerlong美術館(上海)、「Speechless Waves」Cang Lang Ting(蘇州)、「Windy June」Shenzhen Art Museum(深圳)、「The Drawing Hand」Danysz Gallery(上海)など。

Mao Guanshuai Studio

見附 正康

1975 年、石川県加賀市生まれ。石川県立九谷焼技術研修所卒業。2006 年、経済産業大臣認定伝統工芸士に認定。2019 年「伝統文化ポーラ賞 奨励賞」ほか、受賞歴多数。国立工芸館、兵庫陶芸美術館、金沢 21 世紀美術館などに作品が所蔵されている。赤絵細描の究極技巧で描かれる伝統的な瓔珞文や麻の葉文、それらを配した幾何学的な図柄は、精緻かつ大胆で凄みさえ感じられる域へと到達している。

宮永 理吉

陶芸家。昭和10年(1935)京都生。3代東山。京都美大彫刻科卒。辻晋堂、堀内正和、八木一夫に師事。同34年渡米アート・スチューデント・リーグに学ぶ。走泥社同人。現代陶芸の有力作家。

夏の海

森田 子龍

1912-1998。書家。兵庫県生。名は清。初め上田桑鳩に師事。書の革新を志し、井上有一らと墨人会を結成するとともに、書芸術誌「墨美」を創刊、長く編集主幹を務め、新しい書芸術のあり方を国内外に発信し続けた。京都市文化功労者。平成10年(1998)歿、86才。平成12年、紺綬褒章追贈。

八木 一夫

陶芸家。京都生。鈴木治・山田光らとともに前衛陶芸集団「走泥社」を創立主宰し、陶芸界に革新的役割を果たす。国内のみならず、欧米での展覧会出品・個展も数多く、第2、3回国際陶芸展でグランプリを連続受賞した。昭和54年(1979)歿、60才。

金彩 装ったオブジェ

山田 光

陶芸家。東京生。山田喆の長男。京都高等工芸学校(現京都工芸繊維大学)窯業科卒。卒業した翌年に日展入選。「青年作陶家集団」の結成に参加し、同集団解散後、八木一夫、鈴木治らとともに走泥社を結成した。平成13年(2001)歿、78才。

銀泥陶標

横山 清暉

江戸後期の四条派の画家。京都生。初名は暉三、字は成文・奇文、通称は主馬・詳介、号は霞城。松村景文に学び、花鳥・山水・人物を能くする。元治元年(1864)歿、73才。

金泥引水月千鳥雲小屏風

横山 操

日本画家。新潟県生。石川雅山に油絵を学ぶが、後に日本画に転向し川端画学校で学ぶ。敗戦後シベリアに抑留された体験を題材に作品を描く。青龍社展で活躍するも、多くの作品を焼却し、以降は個展などで活動し水墨画にも挑んだ。石本正や加山又造らと轟会を結成。多摩美大教授。晩年脳卒中により、右半身不随となるが、左手で描き続けた。昭和48年(1973)歿、53才。

夕茜

劉 致宏