#013
Liu Chi-Yu, Kaneshima Takahiro

劉錡豫、金島隆弘

楽しむスケッチ——台湾近代美術の光景を訪ねて

ARTIST
UPCOMING
ARTIST

陳尚謙 邱瑋祥 胡嘉慶 林銓居 蔡宗祐 楊馥安 楊立 石川寅治 西郷孤月

2026.8.28 Fri. — 2026.9.17 Thu.
UPCOMING
Introduction

13回目のGinza Curator’s Roomでは、台湾美術史研究者の劉錡豫氏と金沢美術工芸大学准教授の金島隆弘氏をお迎えして、台湾における近代美術から現代絵画にみる風景表現を取り上げます。

本展では、台湾で活動する画家7名による写生作品をご紹介します。彼らは、近代以降写生を通して描き重ねられた「光景」——土地の記憶や感情、時代の精神を映す風景——に、今日のまなざしを重ね、それらを「なぜ、どのように描くのか」とあらためて問い直してきました。 会場では7名がそれぞれの視点で制作した写生作品や制作過程を記録した映像とともに、台湾の近代美術の形成に関わった日本人画家の作品も展示します。

 

*本展は、金島氏が共同キュレーターを務める展覧会「共時的星叢――時を共にした星たち 越境する芸術のまなざし」(東京都現代美術館、2026年9月5日–12月13日)の開催に合わせた企画となります。

石川寅治 午後の凪、1918

Outline
会期

2026.8.28 Fri. — 2026.9.17 Thu.

日曜休廊

開廊時間

10:00 — 18:00

お問い合わせ

思文閣銀座

TEL: 03-3289-0001

MAIL: tokyo@shibunkaku.co.jp

「共時的星叢――時を共にした星たち 越境する芸術のまなざし」

(東京都現代美術館、2026年9月5日(土)- 12月13日(日))の開催に合わせた企画となります。

Curator's Statement

劉錡豫

四方を海に囲まれた台湾は、面積わずか4万平方キロメートルに満たない島でありながら、標高3,000メートルを超える山々を200以上有し、世界でも有数の山岳密度を誇ります。こうした複雑な地形と多様な気候は、人々の暮らしと結びついた多様な風景を育んできました。

100年以上前、台湾の近代美術を担った画家は、故郷の自然や暮らしの場を重要な主題として描きました。風景は、単なる自然の描写ではなく、故郷への愛着や帰属意識、文化的主体性を表現する契機となりました。時代精神と個々の意志を映し出しながら描かれてきた風景は、人々の記憶や感情、時間の流れと響き合う「光景」へと展開していきます。

本展では、台湾と日本のキュレーターによる共同調査・研究をもとに、思文閣が現代の台湾の画家を招き、台湾における近代美術の風景表現の軌跡をあらためて辿ります。画家は台南孔子廟、台北の円山、宜蘭の北関海岸など、かつて近代の画家が写生を行った場所を訪れ、現地で新たな作品を制作しました。その制作過程も映像に記録しています。

さらに本展のテーマに呼応する作品として、思文閣所蔵作品から2点を紹介します。台湾を訪れた西郷孤月による双幅《蓬莱山》は、現代の画家による風景表現と並置され、異なる時代の風景へのまなざしを示します。また、石川寅治《午後の凪》は高雄・旗津港を描いた作品であり、石川もまた100年前に台湾を幾度も訪れ、現地で写生を行いました。

過去と現在を往復しながら、台湾における近代美術の風景の記憶を絵画から見つめ直した画家とともに、写生という行為が生み出す新たな発見と楽しさに触れてみませんか。

金島隆弘

風景は、見る人によって異なる意味を持ちます。同じ場所に立っていても、そこに故郷を見る人もいれば、異国を見る人もいます。近代の台湾を描いた風景画には、画家たちが生きた土地への愛着だけでなく、日本統治という時代のなかで形成された複数の視点が重なっています。こうした作品を台湾の視点から見つめ直すことは、日本近代美術を、少し違う角度から眺め直すことにもつながります。

本展は、東京都現代美術館で開催される「共時的星叢―時を共にした星たち 越境する芸術のまなざし」と呼応しながら、台湾と日本における近代美術を現代の視点から捉え直す試みです。オンラインでのやり取りを重ねながら準備を進めた作家とキュレーターは、現地で集い、近代の画家たちが描いた場所へ赴きました。そこで作家たちは、実際に土地を歩き、観察しながらスケッチを重ね、描いたものを持ち寄って互いに意見を交わしました。

「スケッチ」とは、単なる記録にとどまらない行為です。作家がその場に身を置き、時間をかけて向き合うことで、新たな視点を得ていくアートプラクティスでもあります。同じ場所を訪れても、作家の視点や経験によって描かれる風景は異なります。その違いは、どのように風景をたどり、どのように観察し、何を残し、何を描かないかという選択のなかに表れているのかもしれません。

過去の画家が見た台湾と、現在の作家が見つめる台湾。その間を往復することで、新たな角度から台湾における近代美術に触れると同時に、これまでとは少し異なる視点から日本の近代美術を眺め直すきっかけにもなります。スケッチという柔軟で軽やかな行為を通して、過去の画家と現在の作家がそれぞれの視点から捉えた台湾の風景に触れ、場所と向き合うことから生まれるアートプラクティスの可能性を探ります。

Curator

劉錡豫

美術史研究者、コラムニスト

国立台湾師範大学芸術史研究所修士。2020年より美術史に特化したメディア「書院街五丁目の美術史ノート」を主宰・運営する傍ら、「典藏ARTouch」のコラムニストを務め、台湾美術史の研究、執筆、普及活動を行う。

陳澄波文化基金会にて研究助手(2018–2019)を務め、李梅樹記念館の企画研究員(2024–2025)として、展覧会「日和:李梅樹の文化見学と実践」の共同企画に携わる。

季刊誌『薫風』の連載コラム「美術史の中の台湾」が評価され、文化部第47回金鼎賞「優良出版物・雑誌類コラム執筆賞」に入選。主な単著に『神々が去った後:台湾神社の収蔵物語』(台北市立図書館第86期「好書大家読」優良少年・児童図書選定(知識読物部門))、共著に『家は台北の名前』、『チワワ地球侵略計画:ネルソン症候群のチワワ名画シリーズ』、『阿里山は一つの山ではない』(2026年台北国際ブックフェア大賞ノンフィクション部門ノミネート、文化部第50回金鼎賞政府出版品類図書賞ノミネート)などがある。

金島隆弘

金沢美術工芸大学 芸術学専攻 SCAPe 准教授

京都市立芸術大学大学院美術研究科博士(芸術学、梅原賞受賞)。東アジアの近現代美術や工芸を含む文化的エコシステムにおける協働、キュレーションの実践、アートプラクティスの研究を行う。

北京にて東京画廊+BTAPギャラリーマネージャーを務めた後、東アジア地域におけるアートプロジェクトや国際交流事業、調査研究などを手がける。「アートフェア東京」エグゼクティブディレクター(2010–2015)、「アート北京」アートディレクター(2015–2017)、「やんばるアートフェスティバル」エキシビションディレクター(2017–2025)、「ACK:Art Collaboration Kyoto」プログラムディレクター(2020–2022)などを歴任。近年は「Object Matters 物体事件」(関渡美術館、台北、2013)や「共時的星叢――時を共にした星たち」(東京都現代美術館、2026)の共同キュレーターを務めるなど、台湾との協働プロジェクトにも取り組む。「豊かな農村環境におけるアートプラクティス」(TeSH GAPファンド採択)をテーマに、芸術実践を通じた文化的エコシステムにおける協働に関する研究・実践を進めている。