ニコラス・トレンブリー
Drawings for Tokyo
Wade Guyton
11回目を迎えるこの度のGinza Curator’s Roomは、キュレーターにパリを拠点に国際的に活躍するニコラス・トレンブリー氏をお招きして、デジタル時代における画像の生成と表現を探求するアーティストの中で、最も影響力のある一人であるウェイド・ガイトン氏の個展を開催いたします。
今回のプロジェクトは、トレンブリー氏とガイトン氏の長年にわたる密接な交流によって実現しました。二人は神保町を巡り、北大路魯山人のカタログと出会いました。本展では、そのカタログを素材としたガイトン氏の新作のドローイングとペインティングを初公開いたします。
絵画の新たな可能性を追究するガイトン氏が、ジャンルを超えた美意識と作品群を生み出した魯山人との邂逅により制作した作品をご覧ください。
2025.2.7 Fri. — 2025.2.28 Fri.
日祝休廊
10:00 — 18:00
思文閣銀座
〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目3番12号 壹番館ビルディング
野村證券株式会社
ニコラス・トレンブリー
2024年秋、ウェイド・ガイトン氏は初めて日本を訪れ、思文閣が架蔵する書籍資料を一覧し、東京神保町の書店街を探索しました。図版本は、コレクターであり出版人でもあるガイトン氏の制作活動において重要な位置を占めています。そのような書籍は創造の源であり、作品を制作するための素材という意味も持ちます。
印刷はガイトン氏の制作において中心的な役割を果たしています。彼の作品はデジタルファイルをインクジェットプリンターで出力することによって作られ、エラーやインクの滴り、印刷の欠陥は構成的アプローチに不可欠であり、それによって作品ごとの独自性が生まれるのです。無地のキャンバスに描かれる彼のペインティングとは異なり、彼のドローイングは図版本からとった印刷されたページに描かれます。彼はコンピュータが生成した記号や形状、例えば有名な「X」モチーフや炎のイメージなどを様々な形式で何度も刷り重ねます。
この度の「Drawings for Tokyo」では、ガイトン氏は芸術家・北大路魯山人(1883-1959)の作品図録を用い、その焼物の図版の上に一連のドローイングを制作しました。書家、陶芸家、文筆家、ギャラリスト、出版人、そして料理家と多様な肩書を持つ魯山人は、伝統的な日本の美学に触発され、その美意識を二十世紀の現代に進化させ分野の垣根を越えた作品群を生み出しました。
今回の作品は、魯山人の陶芸におけるより職人的で土着的でありつつも同時に革新的である姿勢と、現代の機材を用いて伝統的な絵画の慣習に挑むガイトン氏の創作が融合し、相互作用を起こします。同世代の作家たちを代表する存在の一人として、ガイトン氏はデジタルプロセスの限界を探り、作品とその創造、そしてその表現との関係を問いかけます。
テキスト、記号、画像、伝統的なものと現代的なものの相互作用と重なり合いは、独特な作品群を生み出し、観る者を、二つの芸術的な時代、まったく異なる文化、そしてイメージへの不可避的な変容に直面した芸術表現の間へと誘うことでしょう。
思文閣銀座の伝統を踏まえた空間でのインスタレーションのために、ガイトン氏はニューヨークのスタジオの床に置かれた自身のドローイングに基づき3点のペインティングも制作し、これらの絵画を日本建築の伝統である床の間に展示することにしました。
Nicolas Trembley
ニコラス・トレンブリー
パリとジュネーヴを拠点とする美術批評家、キュレーター、アドバイザー。現在は現代美術のスィズコレクションディレクターを務める。スイス・インスティチュート(パリ)、ジュネーヴ近現代美術館(MAMCO) (ジュネーヴ)、ポンピドゥー・センター(パリ)、ル・コンソーシアム(ディジョン)、ギメ東洋美術館(パリ)など、多くの機関と協力。
1990年代、現代美術の映像配給と制作に特化したプラットフォームであるbdvを共同設立し、そのアーカイブが現在アルルのリュマ財団に収蔵される。
過去十年間、Paceギャラリー(ロンドン、ニューヨーク)、タカ・イシイギャラリー(香港)、艸居(京都)、そしてAsia NOWのために、パリのモネ・ド・パリで日本の民藝運動に関する展示を2013年から2022年にかけて開催した。2024年のアート・パリのアート&クラフト部門と、2025年にはアートジュネーヴでの「Sur Mesure」のキュレーターを務め、現在はVAGUE KOBE にてフランスのヴァナキュラー・デザインに関する展示と、工芸・アート・展示に関する出版に携わる。
十年前にウェイド・ガイトン氏と大規模なモノグラフ展を企画。ガイトン氏はル・コンソーシアム・ディジョン&アカデミー・コンティ(ヴォーヌ・ロマネ)のスペースのために特別に制作した新作30点を発表。合わせて、トレンブリ―氏が編集し、哲学者トリスタン・ガルシアによる詳細なエッセイを加えた「Wade Guyton」を、レ・プレス・デュ・レエルより出版する。
ガイトン氏とのさまざまなコラボレーションによって、密接でプロフェッショナルな関係を築き上げており、今回の企画も彼とのこれまでの経緯によって実現したのである。
Wade Guyton
ウェイド・ガイトン
1972年インディアナ州ハモンド生まれ、ニューヨーク在住。デジタル時代における画像の生成と表現を探求するアーティストの中で、最も影響力のある一人。
2000年代初頭より、デジタル画像制作の状態と影響について一貫して探求を続ける。プリンターの設計仕様を逸脱した操作や材料を用いるなど、誤った用法を意図的に行うことで、デジタル作品に内在する対立を顕在化させ、視覚化の手法が帯びる条件制約的な性質に疑義を投げかけている。
最新シリーズでは、床で乾かしている最中の絵画を携帯電話で撮影したスナップショット、スタジオの風景やそこからの眺め、スクリーンショット、拡大されたビットマップ画像を統合することで、絵画と写真の相互作用を強調している。
これまでに、アメリカ芸術文学アカデミー(2014年)、ファウンデーション・フォー・コンテンポラリー・パフォーマンス・アーツ(2004年)より賞を授与される。またソクラテス彫刻公園新進アーティスト助成(2003年)、アーティストスペース独立プロジェクト助成(2002年)を獲得。デルフィナ・スタジオ・トラストより支援(2000年)を受ける。
これまでの主な個展は、エスパス ルイ・ヴィトン 東京(東京、2024年)、パリ市立近代美術館(パリ、2023年)、ルートヴィヒ美術館、(ケルン、2019年)、サーペンタイン・ギャラリー(ロンドン、2017年)、ブランドホルスト美術館、(ミュンヘン、2017年)、MADRE美術館(ナポリ、2017年)、ジュネーヴ近現代美術館(MAMCO) (ジュネーヴ、2016年)、ル・コンソーシアム・ディジョン & アカデミー・コンティ(ヴォーヌ・ロマネ、2016年)、クンストハレ・チューリッヒ(チューリッヒ、2013年)、ホイットニー美術館(ニューヨーク、2012-2013年)、ルートヴィヒ美術館(ケルン、2010年)、ドント・ダーネンス美術館(ドゥールレ、2009年)ボローニャ近代美術館、(ボローニャ、2008年)、ポルティクス(フランクフルト・アム・マイン、2008年)、クンストフェライン(ハンブルク、2005年)などがある。